
今年も暑くなってきた。
この季節になるときまって、10年以上前にヨーロッパを旅したときの体験を思い出す。
パリのユースホステルに泊まったときのことだ。
ユースホステルあるあるとして、シャワールームの忘れ物が「共有物」になる現象がある。棚の上には誰かが置いていったシャンプーやボディソープが並んでいて、後に入ってきた者はなんの疑いもなくそれを手に取る。
その中に、見慣れない文字のボトルがあった。
"Shower Gel"
シャワージェル。シャンプーでもボディソープでもない。これは何者なのだろうか。
裏面を読むと、
「身体に塗って洗い流してください」
と英語で書かれている。
……なんだそれ。
塗って流すだけでは洗ったことにならないし、洗い流してしまえばボディローションにもならない。
手に取って擦り合わせてみる。
ちゃんと泡立つ。粘度は低く、ボディソープほどモコモコと泡立たないが、体を洗うには十分だ
「塗って流す」と書いてあるものの、せっかくなのでタオルで泡立て、身体をこすって洗った。
メントールの爽快感と香りが強くしばらく続いた。暑い夏には気持ちよい使用感だ。
気に入ってしまった私は、その後スーパーでシャワージェルを購入。夏の長旅の相棒になった(共有物をパクらなかった俺えらい)。
そして旅の終わり、どこか別のホステルのシャワールームへ置いて帰ったはずである。
日本では全く存在感なし
帰国後、ふと思い立ってシャワージェルをドラッグストアで探してみた。
ない。
もともと見たこともなかったのだから当然といえば当然なのだが、本当に見当たらないのだ。
「欧米で定着しているなら、なんだかんだ日本にも入ってきて流行るだろう」
そう思っていたが、10年以上経っても「シャワージェル」は日本ではマイナーなまま。というより、商品カテゴリとしてほとんど存在していないように見える。
シャワージェルとは何か
結論から言えば、シャワージェルは液体状のボディ洗浄料である。
役割は、日本でいうボディソープと変わらない。使い方も手やスポンジに取って体に塗って洗い流すというものだ。
ただし、いくつか特徴がある。
- ジェル状で透明または半透明
- 「塗って流す」がメインで、「泡立て、擦る」使い方は強調されない
- 柑橘系、ココナッツなど香りのバリエーションが豊富
- クール感を強調するものが多い
なぜ欧米で定番、日本でマイナー?
背景には、入浴文化の違いがある。
日本では湯船に浸かる文化があるが、欧米ではシャワーが中心だ。立ったまま短時間で汗を流し、さっぱりすることが求められる。
そのため「香り」や「爽快感」が、日本以上に重要な価値になる。
さらにヨーロッパには香水文化がある。ちょっとした外出前のシャワーでも、しっかりと香りの付いたものが好まれる
シャワージェル、ボディローション、香水を同じブランドでそろえ、香りを重ねて楽しむこともある。
シャワージェルは、その最初の一歩という位置づけである。
一方、日本にはすでに「ボディソープ」という強力なカテゴリが存在し、機能もほぼ同じといってよい。
あえて別の名前を付けて売る理由が乏しく、マーケティング的にも新しいカテゴリを育てる必要性が小さいのではないだろうか。
高まるブームの機運!?
とはいえ、私が初めてシャワージェルを知ってから10年以上が経ち、状況は少しずつ変わってきたようにも思える。
「風呂キャンセル界隈」という先鋭的な事例はともかく、湯船に浸からず、シャワーだけで済ませる人は以前より増えている(らしい)。
そして、日本の夏は年々アホみたいに暑くなり、湿度も高い。べっとべとである。
"シャワーでさっぱりしたい"
という需要は、昔より確実に大きくなっているはずだ。
シャワージェルが「ピン」で流行る余地があるのではないか、と思う。
Amazonでシャワージェル購入するには
ちなみに現在ECサイトで検索すると、ちゃんと「シャワージェル」はヒットする。
ただし、商品名にはっきり「シャワージェル」と書いている商品は輸入品が多い。
たとえばドイツのアルゲマリン(Algemarin)
イギリス・ユニリーバのAXE「Phoenix」
などがある。
うろ覚えではあるが、AXEのシャワージェルは、私がホステルで使ったものに近い。
……というか、もしかするとまんまこれかもしれない。
ただ、AXEの場合、ボディソープは日本発で販売しているのだが、シャワージェルは輸入品しかないようで、非常に高い。
一方、国産メーカーでも似たような商品はある。しかし多くは「ボディソープ」の名称のようだ。
「シャワージェル」を謳っているのは、ザ・ボディショップなど、自然派・オーガニック系ブランドが中心なのも興味深い。
欧米由来の製品にただよう、どこか「意識高め」のイメージが先行したカテゴリになっているのかもしれない。
国産「俺たちのシャワージェル」候補
しかし、本音を言えば私が懐かしく感じているのは、そういうおしゃれなものというより、謎の青いジェルで「スカッと爽快!」みないなノリのもの
そう思って探していると、国内メーカーのある商品を見つけた。
花王の「バブ 爽快シャワー スーパーエクストラクールジェル」だ。
商品説明に「シャワーで流すボディジェル」との記載があり、明らかに欧米のシャワージェルを意識した商品だろう。
青を基調としたパッケージに、なぜかマンモスのようなイラスト。「カラダ一気に北極圏」という「冷感」をこれでもかと押し出した気取りのないコピー。
いいぞ!この庶民的なアプローチ!
いつから発売しているのかは分からないが、雰囲気も含めて「日本版・俺たちのシャワージェル」と呼びたくなる商品だ。
ここで興味深いことに気づいた。
この商品、Amazonでの分類カテゴリが「制汗デオドラント」なのだ。
「シャワージェル」という独立カテゴリがないだけではなく「ボディソープ」でもない。カテゴリ分けはいまだ混乱している様子だ。
ただこれは、ボディソープのカテゴリに入れ、既存の強力な製品群に埋もれてしまうことを防ぐためのポジショニングかもしれない。
すでに知名度のある入浴剤ブランド「バブ」のブランド拡張として発売していることからも、新しい製品カテゴリを何とか日本に定着させようという意志を感じる。
ともかく、成功を祈る次第である。
暑い毎日が続く中、懐かしい清涼感を追い求めるように思い出をたぐり、つらつら書いてみた。
あれ以来、時折思い出しつつ、積極的に買おうとしたこともなかったシャワージェルではあるが、せっかくここまで調べてみたので、この夏はスカッと再デビューしてみようと思っている。























